公開日:2025年12月19日

【2025年ベスト展覧会】鷲田めるろ(金沢21世紀美術館館長)が選ぶ3展 |年末特集「2025年回顧+2026年展望」

年末特別企画として「Tokyo Art Beat」は、批評家やキュレーター、研究者、アート好きで知られる有識者の方々に、2025年にもっとも印象に残った展覧会を3つ挙げてもらった。選んだ理由や今年注目したアート界の出来事についてのコメントと併せてお届けする。(展覧会の順位はなし)

「日常のコレオ」(東京都現代美術館)会場風景より、FAMEME《THORNITURE》(2025)展示風景 撮影:編集部

鷲田めるろが選ぶ「ベスト展覧会」

(A)「斉藤陽子× あそぶミュージアム」鯖江市まなべの館

(B)「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」アーティゾン美術館

(C)「開館30周年記念展 日常のコレオ」東京都現代美術館

(A)は、今年9月に逝去した斉藤陽子の日本で初めての個展。生誕地である福井県で開催された。1963年の渡米以来、海外を活動拠点としたため、国内よりも海外での評価が高い。本展は、斉藤の長い活動歴の回顧展であるとともに、福井時代の地域の作家からの影響関係も示そうとしていた。フルクサスへの参加、参加型アートの先駆者といった観点から重要で、今後、国内でも研究が進むことが望まれる。

「 斉藤陽子×あそぶミュージアム」(鯖江市まなべの館)会場風景より、「フルックス・ランチ」シリーズ(1990年代、深瀬記念視覚芸術保存基金蔵) 撮影:清水冴 

(B)は、西洋と日本の近代美術を収集している印象の強いアーティゾン美術館が、オーストラリアのアボリジナル・アートを継続的に収集していることを示す展覧会であった。とくに、女性作家に焦点を絞った点も評価すべきである。工芸的な表現のみならず、イギリスがオーストラリアで行った核実験をテーマとするイワニ・スケースのガラス作品などもあり、多様な表現を見せていた。

「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」(アーティゾン美術館)会場風景より、イワニ・スケース えぐられた大地 2017 © Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY 撮影:編集部

(C)は、インドネシアやブラジルなど、非欧米圏の広範囲にわたる、キュレーターのリサーチ力にまず驚かされた。周縁化された人々に寄り添いながら、クローバル化された社会を批判的に問う作品が集められていた。

「日常のコレオ」(東京都現代美術館) 撮影:編集部

年末特集「2025年回顧+2026年展望」は随時更新。

「2025年ベスト展覧会」
▶︎五十嵐太郎
▶︎
平芳裕子
▶︎和田彩花
▶︎能勢陽子
▶︎鷲田めるろ
▶︎鈴木萌夏
▶︎大槻晃実
▶︎小川敦生
▶︎山本浩貴
▶︎倉田佳子
▶︎小川希
▶︎番外編:Tokyo Art Beat編集部

鷲田めるろ

わしだ・めるろ

鷲田めるろ

わしだ・めるろ

金沢21世紀美術館館長、東京藝術大学大学院准教授。1973年京都市生まれ。1998年東京大学大学院美術史学専門分野修士課程修了。金沢21世紀美術館キュレーター(1999-2018)、十和田市現代美術館館長(2020-25)を経て、2025年より金沢21世紀美術館館長。第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館のキュレーター(2017)。あいちトリエンナーレ2019キュレーター。2023年より東京藝術大学国際芸術創造研究科准教授。単著に『キュレーターズノート二〇〇七-二〇二〇』(美学出版、2020)。 ポートレイト撮影:小山田邦哉