人々が寝静まった夜、東京・上野の東京国立博物館に恐竜たちが現れる──。そんな幻想的な光景を実際に目にできるのが、「恐竜大夜行2025」だ。
壁画や造形制作を手がける株式会社ON-ARTがプロデュースする体験型恐竜ライブショー「DINO-A-LIVE」の恐竜たちが集結し、夜の博物館を舞台にパレードを繰り広げる。2024年の初開催では、約4000枚のチケットが即完するほどの反響を呼び、2025年は内容をさらにアップデートしたかたちで開催となった。


百鬼夜行絵巻に着想を得て、妖怪や鬼の代わりに恐竜たちが夜の中庭を練り歩く。東京国立博物館という場ならではの、非日常的な夜のパレードに迫る。
パレードに登場する恐竜は約20頭。ティラノサウルスをはじめ、トリケラトプス、ステゴサウルス、アンキロサウルス、ギガノトサウルスなど、人気の恐竜たちが次々と姿を現す。



2025年の見どころのひとつが、「羽毛ティラノサウルス」の登場だ。ティラノサウルスの幼体をモデルとしたこの個体は、近年の研究で示唆されている羽毛の存在を造形に取り入れている。これまでのイメージとは異なる恐竜の姿を間近に見ることができる点も、本イベントの魅力のひとつだ。

こうした恐竜たちは、人の動きに合わせて動く恐竜型メカニカルスーツとして制作されている。皮膚の質感や筋肉の動き、身体の重さを感じさせる動きまで丁寧に作り込まれており、たんなる着ぐるみとは異なるリアリティさがある。
「恐竜大夜行2025」は、恐竜をただ眺めるだけのイベントではない。会場に足を踏み入れた瞬間から、恐竜たちが現れる物語のなかに身を置くような感覚が生まれていく。
その物語の起点となるのが、東京国立博物館の中庭に立つユリノキだ。ユリノキは、恐竜が生息していた白亜紀の時代から現在まで生き続けているとされる、非常に古い樹種である。東博の中庭には、そのユリノキの巨木がいまも存在していて、本イベントでは、恐竜たちを呼び寄せる象徴として演出に組み込まれている。太古の時代から時を超えて存在してきたこの木をきっかけに、夜のパレードはゆっくりと幕を開けていく。

パレードが始まると、恐竜たちは観客との距離を一気に縮めてくる。巨大な身体が目の前を横切り、足音や息づかいが伝わってくるほどの近さは、展示や映像では味わえないものだ。恐竜の動きは決して予測できるものではなく、次に何が起こるかわからない緊張感が、会場全体を包み込んでいく。

やがて終盤を迎えると、恐竜と観客が一体となり、雄たけびを上げる場面が訪れる。夜の博物館という特別な空間の中で、現実と物語の境目が次第に薄れ、恐竜の世界へと深く引き込まれていく感覚を味わうことができるだろう。

さらに会場の随所には、和風テイストで描かれたオリジナルの恐竜イラストが配置されている。「もし日本の昔の人々が恐竜を目にしていたら」という想像から生まれたビジュアルは、イベント全体の世界観にやわらかな奥行きを与えている。

本イベントを手がける株式会社ON-ARTは、博物館展示や造形制作をルーツに、リアルな恐竜表現を追求してきた。2005年から制作を続ける恐竜型メカニカルスーツは現在37体にのぼり、いずれも最新の学説を踏まえながら、「生物としての必然性」を大切にして作られている。

その根底にあるのは、目の前に現れた瞬間、思わず息をのみ、「かっこいい」「本当に生きているみたいだ」と感じてほしいという思いだ。恐竜に出会った子供たちがハッと驚き、目を輝かせる──その一瞬を何よりも大切にしながら、造形や動きの細部まで作り込んできたと、代表取締役の金丸賀也は語る。
「DINO-A-LIVE」が掲げるのは、「センス・オブ・ワンダー」。言葉になる前の驚きや感動を入口に、恐竜をきっかけとして自然や生き物の世界へ関心を広げてほしいという願いが、「恐竜大夜行」というかたちで表れている。

夜の東京国立博物館を練り歩く恐竜たちは、たんなるエンターテインメントにとどまらない。日本のものづくりと想像力が重なり合い、見る人の記憶に残る体験を生み出している。その驚きは子供たちだけのものではなく、大人の心にも新鮮に響く。
3月には、18歳以上の大人を対象としたイベント「DINOSAUR RUNWAY」が秋葉原で開催される予定で、DINO-A-LIVEの世界観はさらに広がりを見せていく。年齢や立場の異なる人々が、それぞれの視点でこの感動を味わえることも、本プロジェクトならではの魅力と言えるだろう。