公開日:2025年10月28日

カルティエ現代美術財団、新拠点をパリ・パレロワイヤルにオープン。開館記念展「エクスポジション ジェネラル」を開催中!

カルティエ現代美術財団がパリ・パレロワイヤルに新拠点をオープンした。 ジャン・ヌーヴェル設計の新空間で開館記念展「エクスポジション ジェネラル」開催中。杉本博司、横尾忠則らも参加。

ボディス・イセク・キンゲレス Projet pour le Kinshasa du troisième millénaire 1997

2025年10月、カルティエ現代美術財団が、パリ中心部・パレロワイヤル広場2番地に新拠点をオープンした。ルーヴル美術館の向かいというパリを象徴とするロケーションに誕生したこの空間は、1984年の創設以来、ジャンルや地域を越えて現代アートを支援してきた財団の新たな時代の幕開けを告げた。

歴史と革新が交差する新しい空間

新しい拠点は、かつて「グランドホテル・デュ・ルーヴル」および「グランマガザン・デュ・ルーヴル」として使用されていた歴史的建造物。1854〜55年に建設されたこの建築を、ジャン・ヌーヴェルが改修し、過去と未来をつなぐ革新的な空間として再生させた。総面積8500㎡、うち約6500㎡を展示面積とする広大な空間には、5つの可動プラットフォームを備え、展示構成を自由に変化させられるモジュール設計が導入されている。ガラス張りのファサードを通してパリの街並みを一望できる開放的な構造は、都市とアートを結びつける「開かれた美術館」としての理念を体現している。過去と未来がつながる場所として、都市計画や環境といった現代の課題にも、アートの視点を用いて積極的に取り組んでいる。

川内倫子 Cui-Cui 1999-2005
ロン・ミュエック Woman With Shopping 2013

オープニングを飾る展覧会「エクスポジション ジェネラル(Exposition Générale)」は、10月25日から2026年8月23日まで開催中だ。カルティエ現代美術財団の40年にわたるコレクションを、約600点・100組以上のアーティストの作品によって紹介。参加アーティストには、クラウディア・アンデュジャール、ジェームズ・タレル、サラ・ジー、オルガ・デ・アマラル、蔡国強、デヴィッド・リンチ、アネット・メサジェなど、国際的に著名な作家が名を連ねる。さらに日本からは、杉本博司、横尾忠則、川内倫子、石上純也といった、これまで財団とゆかりのあるアーティストたちが出展している点も注目だ。

ビル・ヴィオラ Nine Attempts to Achieve Immortality 1996
サラ・ジー Tracing Fallen Sky 2020 Installation in situ 2025
オルガ・デ・アマラル Muro en rojos 1982
横尾忠則による肖像画の作品
石上純也 Chapel, Shandong, China

展覧会は、「建築という装置(Machines d’architecture)」、「自然であること(Être nature)」、「ものをつくる(Making Things)」、「現実の世界(Un monde réel)」という4つのメインテーマで構成され、科学・技術・素材・生態系といった多様な領域を横断しながら、アートの実験性と現代社会の関係を探る。展示デザインを担当したのは、オランダを拠点とするデザインデュオ、フォルマファンタズマ。19世紀にこの建物で開催されていた「エクスポジション・ジェネラル」から着想を得て、かつての万国博覧会の精神を現代的に再構築している。展示空間自体が、社会と技術、芸術の接点を可視化する批評的な場となった。

都市とアートの新たな関係性

本展は都市の中でアートをどのように位置づけるかという問いに対する、カルティエ現代美術財団の明確な回答でもある。大通りに面した透明なファサードや地下通路「ギャラリー・ヴァロワ」などを通じて、建物の内と外が連続し、通行人が自然に展示の一部を体験できる構造となっている。また、2026年春にはワークショップや教育プログラムを行うスペース「La Manufacture」が新設され、子供から大人までがアートに触れ、学ぶための場が提供される予定だ。

建築とアートが呼応する場所

歴史的建造物の再生、都市への開放、そして多様なアーティストの共演。カルティエ現代美術財団の新拠点は、たんなる移転ではなく、「建築と現代アートの交差点」として、21世紀のミュージアム像を更新する試みとなる。財団の40年を振り返りながらも、その先の未来を見据えるオープニング展「エクスポジション ジェネラル」は、まさにその新しい出発点を象徴している。

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