東京藝術大学がニューヨークに国際活動拠点「GEIDAI NY DESK」を開設。ニューミュージアム付属機関「NEW INC」内に設立

ニューミュージアムのリニューアルオープンを機に本格始動。日本の文化芸術が国際的な現場と持続的に関わり続けるためのインフラ機能を目指す

ニューミュージアム内観 Courtesy New Museum Photo: Jason Keen

日本のアーティストと、ニューヨークのクリエイティブなエコシステムを接続する

東京藝術大学は、アメリカ・ニューヨークの現代美術館ニューミュージアム(New Museum)が運営するインキュベーション・プラットフォーム「NEW INC」のアンカーメンバー(NEW INC Anchor Member)として参画。同施設内に次世代のアーティストやクリエイターの海外活動支援拠点となる「GEIDAI NY DESK(藝大ニューヨーク・デスク)」 を開設した。

NEW INCは、美術館が主導する世界初の文化的インキュベーションプラットフォームとして2014年に設立。アート・テクノロジー・デザイン・社会的インパクトの各分野で活動するクリエイターや起業家らを対象に、コワーキングスペースやネットワーキングの機会、専門家によるメンタリングを提供し、クリエイティブ産業の革新を支援している。

ニューミュージアム外観 Courtesy New Museum Photo: Jason Keen

「GEIDAI NY DESK」は、NEW INCのアンカー・メンバーとして、ニュー・ミュージアム内に専用のワークスペースを設け、ニューヨークで活動するアーティストやクリエイター、研究者らに開くというもの。利用者は藝大出身者に限らず、日本の才能ある次世代のアーティストやクリエイターを対象とし、彼らがニューヨークのクリエイティブなエコシステムへ直接的に接続するための「出島」機能を担う。具体的には、以下4つの機能を循環させ、アーティスト個人がより多くの機会を得るためのサポートを行なっていく。

対話(Dialogue):現地のキュレーター・批評家・アーティストと継続的な議論の場

交流(Exchange):アート・テクノロジー・デザイン・社会起業など異分野のクリエイターや投資家とのネットワーキング機会

場(Studio):リサーチとプロジェクト開発のための拠点

知の共有(Knowledge):滞在中に得た活動知見の集積と、日本・世界の双方向への還元

2025年から実験的に稼働を行っていたが、このたび3月21日にニューミュージアムの拡張新館(OMA設計)がリニューアルオープンしたことにあわせて、本格的な運用を開始した。SANAA設計の既存の本館とつながるニューミュージアムの拡張新館は、上層階にアーティスト・イン・レジデンスのための専用スタジオや、NEW INCのための専用拠点が設けられた。GEIDAI NY DESKは、ニューヨーク・バワリー地区という現代アートの最前線から、日本の文化芸術が国際的な現場と持続的に関わり続けるためのインフラとなることを目指す。

ニューミュージアム外観 Courtesy New Museum Photo: Jason Keen

運営にあたっては、メディアアートの国際展開支援プロジェクト「WAN(Art & Tech Creators Global Network)」などと戦略的に連携。初期メンバーとしてWAN採択作家・研究者が利用者として参画し、NEW INCのコミュニティと日常的に協働することで、実践的なネットワークを広げていく。

主なアーティスト・クリエイター(WAN採択者より・予定を含む):
田中みゆき(キュレーター、アクセシビリティ研究者、社会福祉士)、青木竜太(芸術監督、社会彫刻家)、木原共(アーティスト、ゲーム作家)他、村本剛毅(アーティスト)、吉田山(キュレーター、アーティスト)、小宮知久(メディアアーティスト、作曲家)、花形槙(アーティスト)、宇佐美奈緒(アーティスト) らが利用予定

日比野克彦「繋がりの場として、働きかけるベースとしていきたい」

ニューヨークでは、文化庁の海外研修やアジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)のプログラムなどを通して派遣されたアーティストをはじめ多数の日本人アーティストが活動しているが、彼らの多くは一から人脈を築き、文化の壁を乗り越えなくてはならない。GEIDAI NY DESKでは、そうした課題感を背景に、アーティストのニューヨークでの経験を共有できる場を作ることで、個々のネットワークを蓄積し、現地を拠点とするアート関係者との出会いの創出など、創作活動を支える仕組みを作ることを試みる。

また大学としてはOB支援としての目的もあり、坂本龍一、村上隆、千住博、現学長の日比野克彦といったニューヨークで活動した卒業生の軌跡に追随すべく、次世代の才能がよりスムーズに現地のネットワークに参画できるよう、大学として組織的に環境を整備する試みと位置付けている。

日比野克彦はGEIDAI NY DESKの運用について、次のようにコメントを寄せている。

これまでに多くのアーティストが日本からNYアートシーンにやってきている。その背景はそれぞれであるが、共通している点があるとしたら、NYの社会との繋がり、NYのアート支援者との繋がり、個々にやってきているアーティスト同士の繋がり、は自分自身で開拓しなくてはならないということ……。

今回のNEW INCでは、この課題に対して積極的に繋がりの場として、機会として働きかけるベースとしていきたいと考えています。

このことが、アートシーンを作品主義から人間主義にと認識を移行させて、本来のアートの力をNYからも発信し、世界が求めている社会に近づけてくれることになると考えています。

米国寄付税制優遇に対応した基金の設立により、持続可能な運営モデルへ

さらに本プロジェクトの特徴として、長期的に持続可能な運営モデルを構築するためのふたつの取り組みがある。

第一に、米国寄付税制優遇に対応した基金の設立。アメリカの公的慈善団体Myriad USAのファンドレイジングプラットフォーム「Every.org」に、「Tokyo University of the Arts Fund」を開設した。これによって、アメリカ在住の支援者や企業からの税制優遇措置を受けた寄付の受入が可能となり、日本からの資金のみに依存しない自律的な運営基盤の構築を目指す。

第二に、5つの機関によるコンソーシアム組成。NEW INC内の専用ワークスペースおよび施設利用権の確保にあたっては、パートナーである株式会社メルコグループが賃貸料を全額負担。企業が活動拠点を確保し、大学がコンテンツを展開する、産学連携モデルであるとしている。NEW INC内にはコンソーシアムメンバーの東京藝術大学のほか、京都大学経営管理大学院、愛知県立芸術大学、青木淳の設計事務所「AS」、株式会社メルコグループが契約者となっており、アーティストが拠点を活用するためのサポートを行う。

ニューミュージアム内観

今後の活動としては、NEW INC主催のイベント「DEMO」が6月にニューミュージアムで開催予定。NEW INCのインキュベーションの成果発表展のような位置付けで、展示やトークセッションなど多彩なプログラムが行われる。

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