「第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在」会場風景
「第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在」展が、3月22日まで、東京・虎ノ門の菊池寛実記念 智美術館で開催されている。
2003年の開館以来、陶芸界に足跡を残した物故作家や活躍中の陶芸家に光を当て、現代の陶芸作品を紹介してきた菊池寛実記念 智美術館。陶芸の振興を目的に掲げ、同館が2004年から隔年で開催している「菊池ビエンナーレ」は、制作内容や作家の年齢、キャリアなど応募資格に制限を設けず広く作品を募集し、陶芸表現の現在とその可能性を探る公募展だ。

展覧会では、過去最多となる452点の応募作から選出された、5点の受賞作を含む46点の入選作品を一堂に展示。器の形態からオブジェ的な造形まで、創意と技術が織りなす多様な制作によって表現された作品群に、「陶芸の現在」が映し出される。

11回目となった今回の「菊池ビエンナーレ」では、前回の応募数359点を大きく上回る452点の応募があった。そして、入選率約1割という狭き門をくぐり抜けた46点の入選作品が決定した。これまで同様に画像審査と実物審査の2段階が設けられたが、今回は、制作意図や過去作品についての参考情報も審査員に共有し、作品に加えて制作背景まで見ることのできる審査となった。

また、国内の応募規定と同一となり、国外の作品が増加。日本以外では、アメリカ、イギリス、台湾、イタリアなど、33の国と地域から86点の作品が集った。さらに20代からの応募も前回の28点から50点へと大幅に増加した。作家の世代、地域・国籍ともにより多様化した作品群も、本展の見どころのひとつなる。

審査員は、隠﨑隆一(陶芸作家)、菊地敦己(アートディレクター)、正村美里(岐阜県美術館 副館長 兼 学芸部長)、大長智広(京都国立近代美術館 主任研究員)、畠山耕治(金属作家)、菊池節(菊池寛実記念 智美術館 館長)、島崎慶子(菊池寛実記念 智美術館 学芸課長)の7名が務めた。
受賞作品を見ていこう。第11回の大賞に選ばれたのは、中根楽の《境界の思考》。1995年生まれの中根は応募時に29歳で、「菊池ビエンナーレ」史上初の20代での大賞受賞者となった。
滋賀県出身で現在も同地を拠点に活動する中根。2024年には「ロエベ財団 クラフトプライズ2024」のファイナリストに選ばれるなど、いま注目の陶芸家だ。受賞作の《境界の思考》は、タイトルの通り、「境界」をテーマにした作品。オブジェと器のあいだにある形態の探求を軌に、自然と人工、抽象と具象、偶発と必然などの対となる概念の境界を交錯させて造形化したのだという。

優秀賞は、オランダのへルミ-・ブルグマンによる《David XVIII》。型成形による欠損させた人のかたちで、人間の存在を探求する。

奨励賞には、岡山を拠点にする石田和也の《備前磁器壺》、イギリス在住のダニエル・チャウによる《Narrative》、アメリカのレイ・ブラウンによる《Gourd Vase》の3作品が選出された。
岡山県備前市内の鉱山で自ら採掘した磁器粘土を用いて、新しい時代の備前焼を追求する石田、ろくろ成形の過程で現れる痕跡や記憶との対話を3点の構成に表したチャウ、作品は小ぶりながら、ひょうたん型に多様な質感、表情で遊び心ある花器を制作したブラウンと、作家のバックグラウンドや用いる素材・技法も異なる様々な作品が並ぶ。



このほかにも繊細な美を湛える器から着眼点に個性が光るオブジェまで、国内外のアーティストによる作品が一堂に会する本展。会場を訪れ、陶芸の現在と多様性に触れてほしい。
