MoN Takanawa: The Museum of Narratives ロゴ
JR高輪ゲートウェイ駅に直結するTAKANAWA GATEWAY CITYに、「MON Takanawa: The Museum of Narratives」が開館した。本館が掲げるミッションは「100年先へ文化をつなぐ」。そのテーマを建物全体で体現するかのように、各フロアにはそれぞれ異なる顔と驚きが隠されている。
エントランスロビーに入ると、まず目に入るのが世界的なデザイン会社のPentagramによるサインとフロアガイドだ。MON Takanawaのブランディングパートナーとして全体のクリエイティヴを担い、立体造形から館内各所の案内板まで一貫したデザインで空間に統一感を生み出した。


右手には青山のアートセンター・スパイラルが運営するショップ「MoN Shop by Spiral」、そして少し奥に進むと「MoN Park Cafe by Spiral」のカフェがある。建物のスパイラル状の外観から着想したシグネチャーメニュー「スパイラルコルネ」も提供される。

地下へ下りると雰囲気は一転し、ステージ全面にLEDを備えた最新のシアター空間「Box1000」がある。着席1048名、スタンディング最大2000名を収容する。4月22日からは開館を象徴するプログラム「MANGALOGUE:火の鳥」の公演が予定されている。

約100畳の広さを誇る、4階の「畳」エリアは伊藤園の製造過程で生じる茶殻をアップサイクルした畳床を使用している。6階ルーフトップには足湯テラスとレストラン「 LAUBE」があり、さらに上の屋上には「門神社」や「MoNファーム」も点在する。


開館記念特別展「ぐるぐる展 進化しつづける人類の物語」も開催。タイトルの「ぐるぐる」は、一見ポップで軽やかな印象を感じるが、展示を歩き進めると、世界を読み解く鍵であることに気づく。
会場は全6つのゾーンで構成され、約100の作品と50種類以上のぐるぐるが集結する。20名を超えるアーティストやクリエイターの作品が並び、宇宙の法則から身体の構造まで、理科・社会・美術が入り混じったような、多角的な視点から“ぐるぐる”を伝える。本展は音声ガイドとともに巡ることができ、日本語版は坂本真綾と岡野友佑が担当。ふたりのナビゲーションが、各ゾーンに没入感を与えている。
暗闇のなかに足を踏み入れると最初に目を引くのが、東弘一郎による《自連車》 だ。8つの車輪がぐるぐると回り続けるその様子は、暗がりのなかで予想以上のインパクトがある。

同じゾーンに展示された後藤映則の《Heading》は、世界各地の横断歩道を渡る人々の姿をモチーフにした作品だ。動きと時間の記憶を光によって視覚化し、止まることのない人類の移動と時間の循環を幻想的に描き出している。ただ歩いているだけの人々のはずなのに、いつのまにか視線を奪われる。

さらに進むと「1/100建築模型用添景セット」シリーズで知られるテラダモケイが、山手線沿線をデザインした作品を展示する。装置設計をTASKOとGakki Lab.が手がけた精巧な仕掛けで、紙でできた電車と街がぐるぐると動き続ける様子を俯瞰できる。鉄道好きでなくとも思わず足を止めてしまう。
次の展示室では、私たちの身体に宿るぐるぐるに焦点が当たる。指紋やつむじといった身体的特徴から、繰り返す日常の習慣まで。音声キャラクター「UZU」の巨大な造形とともに、自分自身もまた循環する世界の一部であることを実感する空間。

そして展示の締めくくりとなるのが、再び暗闇に包まれるインスタレーション。最初は戸惑うかもしれないが、瞑想するような感覚で身を置くと、光と音、オリジナルフレグランス「キチベエ」の香りがゆっくりと意識に浸透してくる。自身のぐるぐるを振り返り、これからの生き方をゆっくりと見つめ直す、そんな時間を過ごせるだろう。

人と人、過去と未来、異なる分野が混ざり合いながら新しい文化が生まれていく現代社会のなか、AIをはじめとする新技術が社会を急速に変えていくいまだからこそ、異なる分野への好奇心と共感が重要だということが、この展覧会を通して理解できるだろう。
MON Takanawaのロゴやブランドアイデンティティ全体を手がけたのは、世界的デザイン会社Pentagramだ。開館にあわせて来日したシニアデザイナーのアリス・シャーウィンと、アソシエイトパートナー兼プロデューサーのナブニート・バティアのふたりに、プロジェクトの経緯とデザインの核心を聞いた。
プロジェクトが始まったのは2022年のこと。当初はサイン制作の依頼だったが、話を進めるうちに施設名がまだ決まっていないことが判明し、ネーミングからブランドの言語設計まで、関わる範囲は大きく広がっていった。完成までにおよそ2年半を費やしたという。
「ロゴデザインの核となるコンセプトは『次元を超えた時間』です。文化とは一直線に進むものではなく、螺旋を描きながら移り変わり、そしてまた戻ってくるもの。時間と空間を超えて物語を紡ぎ、運んでいく存在だと思います」(シャーウィン)

MON Takanawaのチームと対話を重ねるなかで見えてきたのは、文化とは一直線に進むものではなく、螺旋を描きながら移り変わり、そしてまた戻ってくるものだという認識だった。様々な人や思想、経験が交差する多次元的な流れによって過去と未来をつなぐ、その発想がコンセプトにつながった。
「M」「O」「N」と読めるスパイラル状のロゴは、常に進化し、生き続ける物語のループを表す。そしてカラーパレットは、赤(太陽)、緑(大地)、青(海)で高輪の豊かな自然から着想を得た。この地が江戸時代から港町として栄えてきた歴史や、屋上に設けられた水盤といった建築上のモチーフも取り入れたと言う。

プロジェクトを通じてもっとも印象に残ったのは、MON Takanawaのチームが物事を語る言葉の詩情だったとバティアは当時を振り返る。「『もし石が語れたら』という言葉を聞いたとき、これほど抽象的かつ美しい問いかけをしてきたクライアントは初めてだと思いました」。その一言が、Museum of Narrativesの「ナラティブ」という概念を作り出した理由のひとつだという。
東京に根ざしながらグローバルな文化機関との対話を目指すMON Takanawa。その両立を可能にしたのは、複数の視点が重なり合う、まさに「ぐるぐる」とした協働のプロセスだったのかもしれない。