会場風景
東京・立川のPLAY! MUSEUMで、絵本作家・画家の安野光雅(1926~2020)の仕事を振り返る「生誕100周年記念 安野光雅展」が開幕した。会期は3月4日から5月10日まで。
本展では『ふしぎなえ』『旅の絵本』『天動説の絵本』『おおきなもののすきなおうさま』など代表作の絵本原画約130点を展示。さらに、安野が描いた風景や歴史といった普遍的なテーマを独自の視点でとらえ直す展示空間「絵画館」も設けられる。

安野光雅は1926年、島根県津和野町に生まれた。幼い頃から絵を描くことが好きで、好奇心あふれる少年だったという。戦後は美術教員を務めながら、芸術や科学に興味を持って創作を続けて国際的に高い評価を得た。
「長い間、絵を描いてきましたが、本を読んであれこれと空想をめぐらしたことは、ここに並んでいる本とも、関係があると思います」(公式図録より)

安野光雅の魅力は、端正で静かな画面のなかに仕込まれた知的な遊び心にある。遠近法や錯視を用いて見る者の感覚を揺さぶり、読者の観察力と想像力を自然に引き出していく。本人は自らを「空想犯」と呼んだという。展覧会では、その原点となる絵本デビュー作『ふしぎなえ』をはじめ、『さかさま』『ふしぎな さーかす』といった初期三部作の貴重な原画が並ぶ。


本展の見どころのひとつが、「旅の絵本」シリーズだ。1977年、安野がヨーロッパを旅した際、着陸間際の飛行機の窓から見た風景に着想を得て誕生した。街並みや自然、そこに暮らす人々の気配を、水彩の透明感と緻密な描き込みで表現しながら、画面のどこかに物語の断片や引用、見落としそうな小さな仕掛けを忍ばせる、安野ならではの視線の誘導が堪能できる。


PLAY! MUSEUMならではの展示設計にも注目したい。作品世界に没入できる体験型の演出に加え、1枚ずつの絵をじっくり見れる構成で、安野作品の観察する楽しさを会場全体で増幅させる。また、安野から影響を受けた現代クリエイターが言葉を寄せる映像『先生へ』も展示される。


静かな絵のなかで、視線が迷い、気づき、物語が生まれる。安野光雅が半世紀以上かけて編み上げた空想の仕掛けを、原画と展示空間の両面からじっくり味わいたい。
