公開日:2026年1月28日

ドキュメンタリー映画『クイーンダム/誕生』:ロシアの若きクィア・アーティストの闘いと表現の記録が日本公開

1月30日から全国公開

『クイーンダム/誕生』 © Courtesy of Galdanova Film LLC.

抑圧のなかで生まれた表現者、ジェナ・マービン

ロシアで生まれたクィア・アーティスト、ジェナ・マービンの姿を追ったドキュメンタリー映画『クイーンダム/誕生』が、1月30日から全国で公開される。

1999年生まれのジェナ・マービンは、LGBTQ+の権利や表現に対する抑圧が強いロシア出身のクィア・アーティスト。首都モスクワから約1万km離れた小さく寒冷な町マガダンで祖父母に育てられ、現在も保守的な価値観が色濃く残るこの町で、ジェナはその異質さゆえに差別や暴力の標的とされてきた。そんな社会に反発するように奇抜な衣装でパフォーマンスを行うジェナの姿はTikTokで注目を集め、やがて『VOGUE RUSSIA』の誌面にも登場。瞬く間に脚光を浴びる存在となっていく。

『クイーンダム/誕生』 © Courtesy of Galdanova Film LLC.
『クイーンダム/誕生』 © Courtesy of Galdanova Film LLC.

ロシアにおいて、LGBTQ+の当事者たちは日常的に危険にさらされており、ただ道を歩くだけで怒鳴られたり、殴られたりすることすらあるのが現状だ。本作でジェナは、スキンヘッドにハイヒール、身体を締め上げるテープや有刺鉄線をまとった“クリーチャー”のような出立で街に立ち、無言のパフォーマンスによって抗議の声を上げる。その姿は、言葉を超えた意思表明として強烈な印象を残す。

『クイーンダム/誕生』予告編

戦争と国外移住の決断、祖父母との関係に揺れる姿

映画は撮影中に起きたロシアによるウクライナ侵攻の影響も生々しく映し出す。反戦デモでの逮捕、迫りくる徴兵。そうした現実を前に、ジェナは国外への移住を決意する。出国までに残された時間はわずか2週間。厳しい状況下でパスポートを取得し、本当に国を出ることができるのか──切迫した時間が続いていく。

『クイーンダム/誕生』 © Courtesy of Galdanova Film LLC.

同時に描かれるのは、ジェナを愛しながらも理解しきれず、時に衝突してしまう祖父母との関係や、未来への不安に揺れる姿だ。20代前半のひとりの若者として、アーティストとして葛藤し、選択を迫られる姿も浮かび上がる。

『クイーンダム/誕生』 © Courtesy of Galdanova Film LLC.
『クイーンダム/誕生』 © Courtesy of Galdanova Film LLC.

監督を務めるのは、ロシア出身でフランス在住のアグニア・ガルダノヴァ。当初は、ロシア各地のドラァグクイーンたちを追う映画を構想していたが、取材初期にジェナと出会い、その芸術性と、抑圧的な社会のなかで自身を貫こうとする勇気に心を動かされ、ジェナひとりに焦点を当てたドキュメンタリーの制作を決意したという。

『クイーンダム/誕生』 © Courtesy of Galdanova Film LLC.

プロデューサーは映画『チェチェンへようこそ ーゲイの粛清ー』の共同プロデューサーとしても知られるイゴール・ミャコチン。2022年「Sundance Creative Producing Lab」のフェローであり、「DOC NYC」によってドキュメンタリー業界で活動する「40歳未満の40人」のひとりにも選出されている人物だ。

若きアーティストによる、個人の表現や自由、命の尊厳をかけた闘いや抵抗の記録を劇場で目撃してほしい。

『クイーンダム/誕生』

2026年1月30日(金)からシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国ロードショー
監督:アグニア・ガルダノヴァ
製作:イゴール・ミャコチン、アグニア・ガルダノヴァ
出演:ジェナ・マービン
配給:Elles Films
原題:QUEENDOM
2023年/フランス・アメリカ/91分
© 2023 GALDANOVA FILM, LLC ALL RIGHTS RESERVED

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