公開日:2026年2月28日

ロー・エスリッジがシャネルのアーカイヴを撮り下ろす。「カンボン通り31番地のフーガ」展が銀座のシャネル・ネクサス・ホールで開幕

「FUGUE FOR 31 RUE CAMBON: ROE ETHRIDGE AT CHANEL ARCHIVES 」がシャネル・ネクサス・ホールで開催中。会期は2月25日〜4月18日

会場風景

アートとコマーシャルを横断するロー・エスリッジ

東京・銀座にあるシャネル・ネクサス・ホールでは、アメリカ出身の写真家、ロー・エスリッジによる展覧会「FUGUE FOR 31 RUE CAMBON: ROE ETHRIDGE AT CHANEL ARCHIVES(カンボン通り31番地のフーガ)」が開催されている。会期は2月25日から4月18日まで。

会場風景

エスリッジは1969年フロリダ州マイアミ生まれ。20代でニューヨークに移り、コマーシャル・フォトグラフィーの仕事を通じて独自の創作活動を築いてきた。撮影のアウトテイク(未使用カット)がアート作品と同等の価値を持ち得ることに気づいたことをきっかけに、ファインアートとコマーシャルの境界を自由に行き来するスタイルを確立。アンディ・ウォーホルやリー・フリードランダーといった作家家への関心も、その姿勢に影響を与えているという。現在はニューヨーク近代美術館、テート・モダン、ボストン現代美術館などに作品が収蔵されている。

「FUGUE FOR 31 RUE CAMBON: ROE ETHRIDGE AT CHANEL ARCHIVES」会場にて、ロー・エスリッジ

本展は、2025年6月に創刊されたシャネルの「アーツ&カルチャーマガジン」のために制作されたフォトコラージュシリーズで構成される。シャネルとエスリッジの協働は10年以上におよぶが、今回のプロジェクトでは、普段は閉ざされているメゾンのアーカイヴ施設「パトリモアンヌ」と、パリ・カンボン通り31番地にあるガブリエル・シャネルのアパルトマンに残されたプライベートコレクションへのアクセスが許された。

会場風景
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撮影された被写体には、ジャック・リプシッツによるシャネルの胸像、ピエール・ルヴェルディによる『ミシアのための詩』の手稿、サルバドール・ダリとガラによるイラスト付きの献辞本、バレエ「三角帽子」のためのパブロ・ピカソによるスケッチ、2世紀のエジプトの葬儀用マスクなど、多彩なオブジェが含まれる。これらはパリのスタジオで現代的な小道具と組み合わされ、新たなフォトコラージュとして撮り下ろされた。

会場風景
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ガブリエル・シャネルの所蔵品に包まれる空間

今回は展示の構成も特徴的だ。通常の展示室とは異なり、壁をなくした開かれた空間のなかで作品は整然と並ぶのではなく、上下ランダムに配置されている。展示室自体が半月のような形状をしており、鑑賞者は作品群に包み込まれるような感覚を覚える。

会場風景

エスリッジの写真に写し出されたオブジェは、ジュエリーや歴史的な品々が現代的な小道具と組み合わされ、豪華な静物画のような佇まいを見せる。日常のモチーフを題材にしながら現実と虚構、親しみやすさと違和感が交差する世界観を表現してきたエスリッジの手法が、シャネルのアーカイヴに新たな生命を吹き込んでいるとも言える。

会場風景
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ファインアートとコマーシャルの境界を軽やかに越えてきた写真家の眼が、メゾンの記憶をどのように再構成したのか。本展を訪れて、確かめてほしい。

会場風景

灰咲光那(編集部)

灰咲光那(編集部)

はいさき・ありな 「Tokyo Art Beat」編集部。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。研究分野はアートベース・リサーチ、パフォーマティブ社会学、映像社会学。