Chansong Kim Solo Exhibition, Vein and Fever, 2025. Pipe Gallery ©IAN YANG
前回「現代アートが熱い! 韓国・ソウル最新アートガイド」を執筆したのが、3年前のことだ。コロナ禍を明けたばかりの頃と比べ、韓国に足を運ぶ人たちは年々増えている。筆者の周りにも、Friezeや光州ビエンナーレを訪れた人も大勢いる。反対に、韓国からは自身のスペースや勤め先の美術館に日本人観光客が増えたとも聞いている。今回の特集では、2026年版の「韓国・ソウル最新アートガイド」をお届けする。
①手荷物は少なめに:地下鉄構内は日本ほどエレベーターやエスカレーターが充実しておらず、また展示会場の位置によってはアップダウンが激しい。ホテルのフロントや、駅のコインロッカー・荷物保管所に預けてから展示を見に行こう。
②地下鉄を使いこなそう:タクシーをはじめ、韓国の公共交通機関は運賃が日本と比べてとてもお得。しかし、タクシー・バスはデモによる通行止めや帰宅ラッシュで、誤差が生まれることも。地下鉄は日本ほど複雑でなく、路線ごとに振り分けられた色を頭に入れておけばスムーズに移動できる。チャージ式の交通カード「気候同行カード(기후동행카드)」をコンビニや地下鉄の販売機で購入して、ソウル市の地下鉄都バスを乗りこなそう。
③お手洗いは駅・美術館・カフェで済まそう:韓国のコンビニには基本的にお手洗いがない。ビルのお手洗いにもパスワード入力式のロックがかかっていることが多いので、ご飯や展示ついでにしっかりと寄っておきたい。
第1回は観光地としてすっかり定着し、国内外のギャラリーが近年立ち並ぶイテウォンとアックジョン、アモーレパシフィック・ミュージアムを筆頭に、目を引くアートスペースが増えたヨンサンのギャラリーを紹介したい。
また各スペースには公式サイトのリンクや、筆者が運営する日本と韓国の展覧会・イベント情報を紹介するポータルサイト「Padograph」のリンクを付けているので、訪問前に詳細を確認してほしい。


建物・コレクション・企画展が目白押しのリウムミュージアム(公式サイト)に行く途中にあるのが、ペース・ソウル(公式サイト、Padograph)だ。韓国ソウルにオープンしたのは2017年と、10年近く経とうとしている。近年では、奈良美智や名和晃平、岡崎乾二郎の個展が記憶に新しい。アグネス・マーティンやマーク・ロスコなど美術史的にも有名な作家を紹介するだけでなく、日本の大御所をはじめ、近年においてはアジア圏の作家にもフォーカスした展示を企画している。2026年はアメリカなど、西欧で評価されている作家を中心に紹介することが決まっている。メアリー・コースやピーター・アレクサンダーの個展を筆頭に、フリードリッヒ・クナスやパム・エヴリンなどのペインターが紹介される予定である。
ペース・ソウルのほかにも、ハンガンジン・イテウォン周辺には海外ギャラリーが立ち並ぶ。タデウス・ロパック(公式サイト)、リーマン・モーピン(公式サイト)、エスター・シッパー(公式サイト)に立ち寄って、世界的に評価されている美術を鑑賞してみよう。


ハンガンジンやイテウォン、ハンナム一帯には、韓国のコマーシャル・ギャラリーが年々増えている。パイプ ギャラリー(公式サイト、Padograph)もそのひとつで、2021年から国内の作家に注力した個展やグループ展を手がけている。今年はサイモン・コやパク・ウンジョンなど、韓国から離れて暮らしていた作家を積極的に取り上げている。YouTubeにアーティストインタビューをアップすることで、親しみやすさをアピールすると同時に、現役の批評家による批評を小冊子に載せることで、理論的なアプローチも忘れていない。今秋開催予定のFrieze Seoulでは、アジア圏の作家にフォーカスしたブース「Focus Asia」にチャ・スンオンの作品を取り上げることが決まっている。
近くには、ギャラリー・バトン(公式サイト、Padograph)、スペース・ウィーリング・アンド・ディーリング(公式インスタグラム、Padograph)、ディスウィーケンドルーム(公式サイト、Padograph)、ヒッピー・ハンナム(公式サイト)ラニソウル(公式サイト)、フィム(公式サイト)、IAH(公式サイト、Padograph)などがある。国内外で活動する韓国の作家の現在位置が知りたいなら、ぜひおすすめしたいエリアである。

個人的な見解であるが、近年勢いを見せているギャラリーがsangheeut(公式サイト、Padograph)である。昨年はFrieze Seoulをはじめ、国内外のアートフェアで若手作家を紹介した。2021年にオープンしたこのギャラリーでは、韓国の作家をはじめ、韓国内ではあまり紹介されていない国外の作家を積極的に取り入れている。コロナ禍から若手作家の紹介に取り組んでいたサンヒーウッは、2026年現在の新興ギャラリーシーンにおける牽引役を果たしたと言えるだろう。今年は、韓国のギャラリーである、Gallery2(公式サイト、Padograph)の企画を引き受けて、サンヒーウッの作家を紹介することが決まっている。また、国内のアートフェアに専念する方針で、4月末にはソウルのアートフェア「The Preview」に参加した。
近隣にはWhistle(公式サイト、Padograph)、galleryERD Seoul(公式サイト)、Ingahee Gallery(公式サイト、Padograph)、ギャラリーエスピー(公式サイト、Padograph)、P21(公式サイト)など、韓国のギャラリーも多数ある。ハンガンジン・イテウォンとも距離的に近いので、予定に組み込んでも良さそうだ。


観光名所といえば、明洞、ホンデ、ソンスなども外せないが、近年国内でも注目されているエリアがヨンサンである。戦争記念館や国立中央博物館とのアクセスもよいが、KTXの大きな駅舎を中心に、周りにはレストランでの食事やお茶にぴったりの場所が集っている。美術関係でいうと、プリツカー賞受賞建築家のデイヴィッド・チッパーフィールドが設計したアモーレパシフィック・ミュージアム(公式サイト)でご存じの方も多いだろう。
スケールの大きい美術館に注目されがちだが、近年新しいギャラリーがこの一帯にオープンしていることも忘れてはいけない。Cylinder 2(公式サイト、Padograph)やARC1(公式サイト)、Caption Seoul(公式サイト、Padograph)など、いまを先駆ける国内の新しいギャラリーやアートスペースの中心には、La Heen(公式サイト)という存在がある。2018年にオープンしたLa Heenは、坂を上ったところにある4階建てのギャラリーだ。カフェの併設されている地下から4階まで階段が続いており、展示スペースはそれぞれ部屋のようなたたずまいである。今年はキム・キュヒョンやチョン・ミジンの個展のほかに、ノ・サンホとホ・サングンの二人展などが企画されている。韓国で近年評価されている若手作家のゴヨソンとジョセフ・ジョーンズの二人展が開催されている。2024年の個展では建物の構造を活用したインスタレーションを同所で披露したゴヨソンの今後の展望も気になるところだ。


高級ブランド店が並ぶアックジョン。ヨンサンのアモーレパシフィック・ミュージアムと同様に、化粧品会社の持つアートスペース。それがコリアナ・ミュージアム(公式サイト)である。2003年に開館したコリアナ・ミュージアムでは現代アートの企画展が催されており、会社の趣旨に沿うようにして、身体・女性をテーマにした展示をこれまでにも開催してきた。現在開催中の展示「Folding Acts」では韓国内外で活動する3名の女性アーティスト(イ・ウンジョン、イム・ソング、チョン・ヒミン)にフォーカスしている。身体を取り巻く様々な関係に焦点を当てた本展は、5月30日まで開催中。同じ敷地には、化粧の歴史を扱った常設展が開かれるコリアナ・コスメティック・ミュージアム(公式サイト)もあるので一緒に寄ってみたい。
外資系のオフィスが立ち並ぶアックジョン。コリアナ・ミュージアムの近くにはPerrotin(公式サイト、Padograph)、アトリエ・エルメス(公式サイト)、SONGEUN(公式サイト、Padograph)、WHITE CUBE(公式サイト、Padograph)など外観の立派なギャラリーも多い。
第2回はチョンノエリア、第3回はホンデエリア、第4回はアングクエリアを紹介予定。ぜひあわせてチェックしてほしい。