会場風景
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丸の内の三菱一号館美術館で「トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで」展が開幕した。会期は2月19日から5月24日まで。
「トワイライト」というタイトルには、ふたつの意味が重なる。ひとつは、浮世絵という産業が時代の変革によって迎えた「黄昏」。そしてもうひとつは、作品に描かれた黄昏時の光そのものだ。

浮世絵の最盛期といえば江戸時代後半のイメージが強いが、明治に入ってすぐに廃れたわけではない。文明開化の様相を描いた開化絵が盛んに制作され、「最後の浮世絵師」と呼ばれる世代も活躍を続けていた。しかし、銅版画や石版画、写真といった新技術と、新聞や雑誌といった新メディアの台頭によって、従来の浮世絵は徐々に衰退していく。
そうした黄昏の時代にあって、夜明けや夕暮れ、雨や雪景色の光の繊細な変化をとらえた絵師が小林清親(1847〜1915)だった。移ろいゆく光と陰翳のなかに東京の景観を描いた彼の作品は「光線画」と呼ばれ、一世を風靡した。光への鋭い関心は、同時代の印象派とも通じる先駆的な視点と言える。そして、清親が見出した光の表現は後の新版画の絵師たちに受け継がれ、彼らは新しい日本の風景を再発見していった。本展では、小林清親から川瀬巴水へと続く新版画の世界を、世界最高峰のコレクションとともに紹介する。ここでは本展の見どころを紹介していきたい。


なんといっても、最大の見どころはアメリカ合衆国の首都・ワシントンD.C.に位置するスミソニアン国立アジア美術館から来日を果たした浮世絵・新版画・写真約130点だ。出品される作品は、ロバート・O・ミュラー(1911〜2003)が蒐集し、寄贈したもの。ディーラーとして米国に新版画を広める役割を果たした彼は、約4500点に及ぶコレクションを形成。吉田博、伊東深水、川瀬巴水といった絵師たちを含むその新版画コレクションは、世界最高峰として注目されている。アメリカ建国250周年という記念の年に、これほどの規模で日本に里帰りするのは貴重な機会となる。


失われゆく浮世絵の技術を継承し、新しい時代の版画を創造しようとしたのが版元・渡邊庄三郎(1885〜1962)だった。彼は清親の見出した江戸東京への郷愁を引き継ぎ、絵師や来日した外国人画家たちと協働して新版画の活動を展開した。本展では、伊東深水の《近江八景》、川瀬巴水の《旅みやげ第一集》や《東京十二題》といった新版画の初期シリーズを数多く取り上げ、浮世絵から新版画への移行期を概観することができる。



光と陰翳によって外界を映し込む写真は、明治の新しい視覚芸術として人々の意識に多大な影響を及ぼした。浮世絵もその影響を免れることはできず、写真を意識した表現が様々に試みられた。

当時の日本人の姿や風俗を記録した写真は、それを持ち込んだ外国人たちには好奇の視線の対象であると同時に、江戸の生活と情趣の貴重な記録でもあった。やがて文明開化によって失われゆく風景を惜しむノスタルジックな態度は、写真と浮世絵が共有するものとなっていく。本展では版画と写真を交互に並べることで、ふたつのメディアがとらえた明治の風景を見比べることができる。

鑑賞後は、充実したグッズ売り場にもぜひ立ち寄ってほしい。小林清親が生まれた墨田区の銭湯文化にちなんだサウナハットや、美しい風景をあしらったマグネットなど、展覧会の余韻を持ち帰ることのできるアイテムが揃っている。編集部のおすすめグッズはこちら。
灰咲光那(編集部)
灰咲光那(編集部)