会場風景
空山基の大規模個展「SORAYAMA 光・透明・反射 -TOKYO-」が、3月14日から5月31日まで、東京・京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOで開催される。
1947年愛媛県生まれの空山基は、緻密でリアルな表現技術で人体と機械の美を追求し、国内外で高い評価を得るアーティストだ。代名詞とも言える「セクシーロボット」シリーズは1978年に初めて発表されたロボット表現を源流とし、映画『ロボコップ』やティエリー・ミュグレーのコレクションなど、その後のロボットのイメージ形成やデザインに大きな影響を与えた。1999年にはソニーの「AIBO」のコンセプトデザインを、2001年にはエアロスミスのアルバム『Just Push Play』のジャケットを手がけ、以降もディオール、ミュージシャンのザ・ウィークエンド、F1ドライバーのルイス・ハミルトンなど幅広いコラボレーションを展開。作品はニューヨーク近代美術館や香港のM+に収蔵されているほか、世界各地で展示を行っている。
作家による過去最大規模の回顧展となる本展は、中国で開催された個展の凱旋帰国となるもの。初期の原画から最新のキャンバス作品、彫刻、新作映像インスタレーションまで、「光」「透明」「反射」を軸に半世紀にわたって展開してきた創作活動の軌跡を展覧する。
プレス内覧会に登壇した空山は、「これだけ大量に(自分の作品を)見るのは初めて。ほとんど自分が好きなことしか描いていないから、振り返ると筋は通っていると思います。画集では迫力が出ないが、我ながらオーラを感じました」と語った。

ともに登壇した南塚真史(NANZUKA代表取締役)は、「空山はつねに『カルチャーもエンターテインメントであるべきだ』と話している。そのようなコンセプトのもと、体験を含めて楽しんでもらえる展覧会を目指しました」と展示構成の狙いを明かした。
展示はテーマ別のセクションで構成され、空山の軌跡をたどる。最初の展示室で来場者を迎えるのは、ずらりと並ぶ近作の大型キャンバス作品だ。
長嶋茂雄、ダースベイダーといった大衆文化のモチーフから、女性の身体とロボットが融合した「セクシーロボット」、ロボティックなペガサスやユニコーン、恐竜まで、空山による「光と透明」をめぐる探究の成果が一堂に並ぶ。メタリックな表現にとどまらず、サメや人魚、水辺に立つ女性像など、「光・透明・反射」の要素を併せ持つ海や水へのまなざしも随所に感じられる。
ステラ マッカートニーとのコラボレーションで用いられたシルバーのイチゴや、シャネル5番の刻印が入ったマリリン・モンローの肖像といった時代のアイコンも並ぶ。水色、ピンク、黄色とカラフルに塗り分けられた壁面の空間に、絵具という制限された素材を使って挑戦を重ねてきた空山の軌跡が浮かび上がる。
足を進めると、打って変わって暗闇のスペースが広がる。「Floating Through Space」と題されたセクションでは、壁面と床に映された映像が宇宙船のような空間を包みこみ、ロボットが漂う宇宙空間に迷い込んだかのような没入体験へと誘われる。

その先では、映像のなかで漂っていた《Space Traveler》の彫刻が象徴的に展示されている。空山作品の代表的なモチーフである《Space Traveler》は、1980年に描かれ、1982年にフランスのSF雑誌『Metal Hurlant』の表紙を飾った絵画がもとになっている。ここでは平面だった《Space Traveler》が立体となって上下の鏡に無限に反射し、永遠の旅を続ける存在として立ち現れる。
続く「Mirror Maze」では、鏡面に覆われたショーケースにロボットたちが一体ずつ収められている。金と銀に輝くメタリックなロボットが時間が止められたかのように様々なポーズで静止し、その反射が近未来の迷宮のような空間を作り出す。
迷宮を抜けると、今度は海の世界へ。1980年代から海洋への関心を表現に投影してきた空山。「Aquarium」セクションで提示するのは、自身が「もっともセクシーな魚」と評するサメの彫刻を水槽型インスタレーションとして表した作品だ。宙に浮いた2匹のメタリックなサメは、空を飛ぶ飛行機のようにも見える。落とされた照明のなか、青い光とくぐもった水音が深海の気配を演出し、周囲には彫刻の原型となった絵画など、モチーフの発展を示す作品群が並ぶ。

続くセクションでは、過去10年間で制作された立体作品を一挙展示。台座の上で様々なポーズをとる「セクシーロボット」たちは、生きた漫画キャラクターのような臨場感を放つ。市松模様の床と複数の鏡が配されたこの空間は、空山作品の世界に入り込んだかのような、超現実主義的な雰囲気をたたえている。
卓越した技術で身体の曲線美や機械の反射を描き出してきた空山だが、その原画を一挙公開する「Pink Tea Room」も本展の見どころのひとつだ。
ここでは1978年にサントリーウィスキーの広告のために描いた最初のロボット作品や、エアロスミスのアルバム『Just Push Play』のジャケットに使用されたロボット化したマリリン・モンローの絵画など、空山のキャリアをたどるうえで重要な作品が集結。『ジュラシック・ワールド』や『ピノキオ』、ミッキーマウスといった世界的IPとのコラボ作品も展示されている。
さらに空山のスタジオを再現したコーナーも登場。画材とともに、個人的な写真やマリリン・モンローのポートレイト、人体の骨格標本などが乱雑に並び、空山作品が生まれる創作の現場の空気を伝える。
また国際的なコラボレーションに光を当てるセクションでは、AIBOの原画やダニエル・アーシャムとのコラボ作品、さらにはステラ マッカートニー、ディオール、ブルガリといったメゾンとのコラボレーションで生まれたアイテムが並び、空山のジャンルを超えたクリエイションの幅広さを実感させる。
本展を締めくくるのは、この展覧会のために制作された新作映像インスタレーションだ。ここでは、空山が子供の頃からのアイドルと称する恐竜、なかでも「TREX(ティラノサウルス)」を映像化。ソニーのハプティクス技術で映像や音響を連動させ、街中を歩きうなり声をあげる姿を臨場感たっぷりに表現した。
本展は作品のキャプションや解説文などの文字情報が一切設置されていないのが特徴だ。「タイトルをつけたら負けだと思っていて、絵で描いているんだから文字はいらない」と空山。本展を「遊園地」のようだとも話したが、「来て楽しんでください。それだけの価値はあります」と自信を見せた。
なおCREATIVE MUSEUM TOKYOが入居するTODA BUILDINGの1階ロビーでは、ソニー・ホンダモビリティが開発中のモビリティ「AFEELA」と空山のコラボレーション車両も展示中。あわせて鑑賞したい。
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